私はかんざしや帯留めの制作において、あえて扱いの難しい「純銀(SV1000)」を素材として数多く作品を製作しております。
※構造上難しい場合はSILVER950を使用します。
その理由は、純銀が持つ格式や希少性、そして静かに輝く美しさが、作品に特別な品格を与えてくれるからです。
純銀は、江戸時代には武家や裕福な家の女性たちが身につける格式ある素材として扱われてきました。
銀の含有率が99.9%と非常に高く、銀合金とは異なる、やわらかな白い輝きとしっとりとした質感を持っています。
派手さではなく、凛とした落ち着きとやさしさを感じさせるその光沢は、手に取った瞬間に上質さを感じさせてくれるものです。
使い込むことで表情が深まり、時を重ねながら持ち主に寄り添うような、そんな魅力も秘めています。
一方で、純銀はとても柔らかく、機械による大量生産には向いていません。
耐久性を重視する場合には、シルバー925や950といった銀合金が選ばれることもあります。
これらは銅などを加えることで硬度を増し、型に流して大量生産されることが多く、
実用性やコストパフォーマンスを重視したアクセサリーに使われています。
ただし、銀合金であるがゆえに変色しやすく、特にシルバー925は空気中の硫黄分に反応して黒ずみやすいという性質もあります。
純銀は、繊細な細工に適した素材であり、職人の技術と想いを込めて一つひとつ丁寧に仕立てることで、特別な一品へと昇華されます。
その柔らかさゆえに生まれる自由な造形や豊かな表現は、純銀ならではの醍醐味ともいえるでしょう。
さらに、純銀は銀合金に比べて変色しにくく、適切なお手入れをすれば美しさを長く保つことができます。
時を重ねて、日々の暮らしの中でそっと寄り添ってくれるような存在になっていくのです。
量産品とは異なる、静かな気品と確かな価値。
それこそが、純銀で仕立てるかんざしや帯留めが持つ、本当の魅力です。
手に取った方がその違いを感じられるような、そんなものづくりを目指して。
伝統の中に息づく素材の美しさを、これからも丁寧に形にしていきたいと考えています。

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