かんざしや帯留めといった和装小物を、すべて一つひとつ、手作業にて丁寧にお仕立てしております。
その制作において、私が大切にしている一つは、「素材」と真摯に向き合うことです。
なかでも純銀は、極めて高純度な素材であり、江戸の昔より、武家の女性や裕福な家の婦人たちが身につける、格式ある装身具として用いられてきました。
そのやわらかで澄んだ白い輝き、しっとりとした質感は、華美に走ることなく、控えめでありながらも確かな品格をたたえており、時を重ねるごとに味わいを深めてまいります。
しかしながら、純銀は非常に柔らかく、機械による大量生産には適しておりません。
その繊細な素材に形を与え、美しさと強度を兼ね備えた作品に仕上げるには、銀の特性を深く理解し、長年にわたって技を磨いてきた職人の手による丹念な手仕事が不可欠です。
熟練の技術がなければ形にならない――それが純銀のものづくりです。
一方、やや硬度のあるSILVER925や950は、強度と加工性に優れており、工業的な大量生産にも適しています。
広く市場に流通する銀製品の多くは、こうした銀合金を用いることで、安定した量産が可能となっています。
けれども、私があえて純銀を多用して用いるのは、その素材が放つ気品、そして職人の技を通してこそ現れる、他にはない表情に惹かれているからにほかなりません。
そこに込められたのは、ひとつひとつの工程に宿る誠意と、美しさを追求する真摯な姿勢。
必要に応じてSILVER950を併用することもございますが、それもまた、素材の個性を見極め、用途に応じて最適な選択を行う作り手としての責任です。
量産ではなく、一点一作の心意気で。
銀そのものの美しさと、職人の魂が響き合ってこそ、真に特別なかんざしや帯留めが生まれると、私は信じています。