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独立初期のポンコツ失敗談

 

【独立初期のポンコツ失敗談】ローラーと油の話

 

 

独立して間もないころ、私は「ローラー」の存在すら知らず、銀を必要な厚みにするために、ひたすら金槌で叩き、ノギスで測りながら製作していました。いま思えば、なんとも非効率で、よくやっていたなと自分でも驚きます。

 

 

そんな私の前に現れたのが、金属を均一に延ばすことができる「ローラー」。

初めて使った時の感動は今でも忘れられません。作業効率が飛躍的に上がり、ものづくりの世界がぐんと広がった瞬間でした。

 

 

ところが、そこはまだまだ素人同然だった私。

ある日、知人から「ローラーはきちんと手入れをしないと錆びてしまうから、定期的に油を差して管理しなきゃダメだよ」とアドバイスをいただきました。

 

 

当時の私は、金属工芸の専門知識も用語も乏しく、「油」と聞いてすぐに思い浮かんだのが――なんと、サラダ油。

「油なら、これでいいか」と思い、丁寧にローラー全体に塗り込み、満足気に一息ついたのも束の間……。

次にローラーを見たときの衝撃は、今でもトラウマ級です。

 

 

ベタベタに汚れ、変色し、とてもじゃないけど使える状態ではなくなってしまっていました。

無知だった自分を心底悔やんだ瞬間でした。

 

 

その後、必死にローラーを掃除し、専門の油を購入。今では道具の手入れを大切にしながら、感謝の気持ちを込めて使っています。

ものづくりは、技術も大切ですが、道具への理解と手入れも同じくらい大切。

 

 

今回は、そんな「ポンコツだった頃の失敗談」を、恥ずかしながらご紹介しました。