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ポンコツ失敗談 バフとかんざし

 

ポンコツ失敗談 〜バフとかんざし〜

独立して間もない頃、師匠のもとへ通っていた時に、忘れられない言葉をいただきました。

 

 

「しっかり叩いて作ったものは、たとえ曲がったとしても美しく曲がる。」

 

当時の私は、この言葉の意味を深くは理解できずにいました。

 

 

 

それからしばらく経ったある日。

師匠の工房で、自分が作ったかんざしをバフ(研磨機)で磨いていた時のことです。

次の瞬間、事件は起きました。

 

 

 

かんざしがバフに引っかかり、

「ガランガランガラン!」とけたたましい音を響かせながら、

最後にはバフの入り口から「ポンッ」と勢いよく飛び出してきたのです。

 

 

 

あまりの衝撃に時間が止まった私。

丸まったかんざしを抱え、師匠に向かって思わず出た言葉は――

「どうしましょう……?」

 

 

 

その時のかんざしは、悔しいほど全体が綺麗に折れ曲がっていて、

師匠の言葉が頭に蘇りました。

「ああ、本当だったんだ」と。

 

 

 

その後は泣きそうになりながら必死で形を戻しましたが、

できれば二度と味わいたくない経験です。

 

 

 

とはいえ、この“バフ事件”――経験者ならきっと分かりますが、

一度きりでは終わらないのです。

作品づくりの最後の関門、それがバフ。

仕上げの瞬間は、今でも一番緊張します。

 

 

 

 

今回は、そんなヒヤリとした失敗談でした。

皆さんもバフには気をつけましょうね。